人を雇うということ
請け負う工事の規模にもよるでしょうが、建設業の場合、自分だけで仕事をやっていくというのはなかなか難しいはずです。人を雇ったり、自分で出来ない部分は外注したりといったことが必要になってくるはずです。
そして、もし、あなたが人を雇うことを考えているとして、それはあなたが考えているよりずっと大変なことかもしれません。
まず、人を雇うと当然ですが給料を払わないといけませんし、事業形態や労働契約の内容によっては、労働保険(労災保険、雇用保険)、社会保険(健康保険、厚生年金保険)といった公的な保険制度への加入も必要になってきます。
お金がかかるという点では雇用も外注も変わりませんが、雇用の場合は、短期間の契約でもない限りは、簡単にやめてもらうことはできない という点に注意しないといけません(短期間の契約でも契約期間内にやめさせたい場合は同様です)。
これはどういうことかと言いますと、法律上、使用者は簡単に労働者をやめさせることができません。特に労働者に落ち度がないのに「なんかこいつ気に入らないからやめさせよう」なんていうのはもちろんだめですが、使用者側で事前に指導することなく「思ったより仕事ができないからやめさせよう」、「遅刻が続いているからやめさせよう」というのも法律的には厳しいです。
さらには、「会社の経営が傾いてきたからやめてくれ」というのも、まず使用者側で、コストの削減などをして努力はしたけど、それでも厳しいからやめてください というような状況にならないと解雇というのは難しいのです。
簡単に言うと、今の日本の法律は労働者を保護するようにできていて、退職の面でも労働者側は明確な理由がなくても辞めたくなったら辞められるようにできていますが、使用者側は辞めさせてたくても合理的な理由がないとできないのです。
現実的には、合理的な理由もないのに解雇しているという事例はたくさんあるでしょうが、そういう案件では裁判でもやられたらまず負けます。そうなると解雇無効ということになり、無効な解雇をしてから払っていなかった給料を払ってくださいということにでもなりかねないのです。
現在の日本では、雇用するということは使用者にとっては実は思っている以上にリスクが高いことなのです。小さな建設業者さんでは、労働者としては雇わず、一人親方の人に外注しているというスタイルをとっているところもあります。これもリスクを抑える一つの方法でしょう(実質的には雇用していると見られても仕方ないケースもあるでしょうし、そういうケースは法律違反をしてしまっている可能性が高いのでしょうが、私の個人的な考えを言わせてもらえば、仕方ない面もあるのかなと思います)。