前借金との相殺の禁止とは?
使用者は、労働することを条件として前貸しした債権(お金)と賃金を相殺してはいけません。
なお、労働者側からの相殺は禁止されていません。ただし、労働者側からの相殺が、実質、使用者からの強制であるなら、それは労働基準法に違反すると思われます。
使用者側から、「お前の今月の給料は借金の返済に充当するから払わない」ということは禁止されていますが、労働者側から「自分の今月の給料は借金の返済に充当してください」ということは禁止されていないわけです。
前借金との相殺禁止のきまりは、お金の貸し借りと労働関係を完全に分け、お金の貸し借りによる身分的拘束関係の発生を防ぐためのものです。労働者が使用者から労働者個人の信用に基づいてお金を借りる場合や弁済期の繰上げなどで明らかに身分的拘束を伴わないものは、労働することを条件とした債権には該当しません。
前借金との相殺に該当しないものの例
●使用者が、労働組合との労働協約や労働者からの頼みで、生活必需品の購入資金などの生活資金を貸し、その後、貸したお金を給料から分割控除する場合、貸付の原因・期間・金額・金利の有無などから総合的に判断し、労働することが条件となっていないことが極めて明らかであれば、前借金との相殺にはならない。
●事業主が、労働者の育児休業期間中に社会保険料の被保険者分を立て替えて、復職後に給料から控除する制度は、前借金との相殺には該当しない。ただし、著しい高金利がが設定されているなど労働することが条件になっていると認められる場合は除く。
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